OPINION
2022/06/13

202200607論文シリーズ3_w_HPサムネ.png

 

こんにちは!私、日本でメディカルイラストレーターとして活動しております、株式会社LAIMANのライアン杏莉です。

 

ここでは、メディカルイラストレーションという職業について私見も交えながらお話ししていこうと思います。

 

今回は「メディカルイラストの必要性」の論文紹介第三弾です!

第二弾では、イラストが医療や教育の現場においていかに有効かを実証した論文を紹介しいたしました。

 

第三弾は、イラストという媒体を超えて、医療分野においての3DCG、アニメーションやVRを使った学習効果を実証した論文を紹介していきたいと思います。

 

一つ目に紹介する論文は制作物ではなく写真を3D化して作られた教材の効果を検証したものです。

2016年ブラジルでのde Faria博士は、医学部生84名を対象に、どのような媒体が大脳辺縁系の解剖学的名称を学習するにおいて有効か検証した研究を発表しています。静止画のみのレクチャーを受けたグループと、脳の解剖を多角度から撮影した動画を3Dゴーグルを使いレクチャーを受けたグループでは、3Dの教材を使ったグループの方がテストで13.1%高い点数が取れたことがわかりました。脳の解剖学など、複雑な構造を理解する上では、3D教材の方が効果的なのです。こちらの論文は写真ですが、写真では見えにくい解剖学の構造を3DCGモデルで作ったり、どのように教材をデザインすれば効果的か提案する作業も、メディカルイラストレーターの仕事の一つです。

<研究で使用された教材>

 

2004年に米国で発表されたMcClean博士による研究では、分子生物学における翻訳のプロセスを学習する際に、アニメーションが非常に効果的であることが証明されています。生物学を受講している大学生26人を①図解のみのレクチャーと個人復習のグループ(12人)と、②アニメーションをレクチャーと個人学習のグループ(14人)、に分けて理解度(テスト)と自信度(アンケート)を測ったところ、⓶のアニメーションを使ったグループの方が理解度が36.75%高く、回答時の自信度も25.58%の差がつきました。こういったアニメーションの制作も、メディカルイラストレーターが担います。

<研究で使用された図解とアニメーション>

 

最後に紹介させていただく論文は、VRの有効性についての研究です。VRは飛躍的な成長が期待される技術です。VRが医療の現場で使用される際にも、コンテンツの正確性を重視するため、メディカルイラストレーターが制作やデザインを担当することがあります。2002年に米国で発表されたSeymour博士の研究では、外科医のトレーニングの際にVRを使用する有効性が実証されています。16人の研修医を①VRなし(8人)②VRあり(8人)のグループに分け、腹腔鏡胆嚢摘出手術の練習をさせました。後に実際の手術の精度を先輩の外科医から審査を受けた結果、VRを使った研修医の方が、29%早く手術を完了させ、ミスが6分の1に減りました。2002年の原始的なVR技術でさえもここまで劇的な効果が発揮されるのであれば、現在の高精度なVR技術は更に有用だと言えるでしょう。

<トレーニングで使用されたVR画面>



メディカルイラストレーターの業務の一つとして、医療者と技術者の架け橋となるコミュニケーターとしての役割もあります。レーマンで制作する医学的、解剖学的に精度の高い3DCGモデリングは、メディカルに関するVRコンテンツの核とも言えるでしょう。将来の臨床医療や医学教育がVRによってどのように革新を遂げていくか目が離せません。

 

 

さて、「メディカルイラストの必要性:論文紹介シリーズ第三弾」参考になりましたでしょうか?

まだまだ紹介したい論文はたくさんございますが、今回にてシリーズ完結になります。メディカルイラストレーションという業界がいかに必要であるか少しでも伝われば幸いです。



参考文献:

de Faria, J. W., Teixeira, M. J., de Moura Sousa Júnior, L., Otoch, J. P., & Figueiredo, E. G. (2016). Virtual and stereoscopic anatomy: When virtual reality meets medical education. Journal of Neurosurgery, 125(5), 1105-1111. https://doi.org/10.3171/2015.8.jns141563

 

 McClean, P., Johnson, C., Rogers, R., Daniels, L., Reber, J., Slator, B. M., Terpstra, J., & White, A. (2005). Molecular and cellular biology animations: Development and impact on student learning. Cell Biology Education, 4(2), 169-179. https://doi.org/10.1187/cbe.04-07-0047

 

Seymour, N. E., Gallagher, A. G., Roman, S. A., O'Brien, M. K., Bansal, V. K., Andersen, D. K., & Satava, R. M. (2002). Virtual reality training improves operating room performance. Annals of Surgery, 236(4), 458-464. https://doi.org/10.1097/00000658-200210000-00008

 

2022/06/02

20220601論文シリーズ2_w_長方形.png

こんにちは!私、日本でメディカルイラストレーターとして活動しております、株式会社LAIMANのライアン杏莉です。

 

ここでは、メディカルイラストレーションという職業について私見も交えながらお話ししていこうと思います。

 

今回は「メディカルイラストの必要性」の論文紹介シリーズ第二弾です!

第一弾では、「なぜ図解や挿絵が活字だけよりも学習に有効か」、車のエンジンの仕組みや童話を使って比較した論文を紹介いたしました。

 

第二弾は、イラストが医療や教育の現場においていかに有効かを実証した論文を紹介していきたいと思います。



1996年に米国Delp博士が行った実験では図説やイラストのある患者説明資料(パンフレットなど)がいかに治療に効果的か、顕著な結果が出ています。

この調査では、裂傷(切り傷)の治療に緊急病棟に来院した患者234名に対して、半数には活字のみ、残り半数には下記のようなイラストと活字のある、アフターケアの説明を書いた紙面が配られました。退院三日後に、紙面に書いてあるケアに従っているか調査したところ、活字のみのグループは54%、イラスト+活字のグループは77%の患者が指示に従っていたことがわかりました。また、活字のみのグループは、そもそも紙面を読んでいなかったり、正しい情報を覚えていなかったりと、他の指標においても歴然とした差がつきました。このように、親しみある正確なイラストは、患者教育において有効であることが分かります。

 

 

<実験で使われた、切り傷のアフターケアについての患者説明資料>

 

 

 

また、イラストと一口に言っても、イラストを見る人の知識量に合わせて情報量を調整する必要があります。「いかに詳細に描くか」の塩梅を見極めることも、メディカルイラストレーターとして必要なスキルです。

例えば、2006年の米国Butcher博士の研究では、用途によってはシンプルなイラストの方が理解を助けるということがわかりました。循環器の仕組みの理解度が低い大学生76人を対象に調査した実験で、①活字のみ②活字+シンプルなイラスト③活字+より詳細なイラストに分け、体循環と肺循環の仕組みを学習させたところ、②活字+シンプルなイラストのグループが一番理解度が上がるという結果になりました。この研究で分かったこととしては、文字だけよりもイラストがある方が理解を助けるのはもちろんのこと、さらに、用途に応じたイラストのデザインをすることが必要であるということです。

 

<実際に使われたシンプルなイラストとより詳細なイラスト>

 

 

<「シンプル」なイラストが、学習前と学習後の理解度が一番上がる>

 

イラストには、不要な情報を省略して、伝えたい情報の質を上げるという写真や映像にはできない強みがあるのです。




さて、「メディカルイラストの必要性:論文紹介シリーズ第二弾」参考になりましたでしょうか?次回のブログ記事では、今回お話しした「医療、教育現場でのイラストの重要性」から更にアニメーション、3D、VRなどの他媒体においてもメディカルイラストレーションの有効性を実証する論文を紹介していきたいと思います。ぜひお楽しみに!



参考文献:

Delp, C., & Jones, J. (1996). Communicating information to patients: the use of cartoon illustrations to improve comprehension of instructions. Academic emergency medicine : official journal of the Society for Academic Emergency Medicine, 3(3), 264-270. https://doi.org/10.1111/j.1553-2712.1996.tb03431.x

Butcher, Kirsten. (2006). Learning from text with diagrams: Promoting mental model development and inference generation. Journal of Educational Psychology, 98, 182-197. Journal of Educational Psychology. 98. 182-197. 10.1037/0022-0663.98.1.182. 

 

2022/05/23

 

20220518論文シリーズ_w-insta 2.png

こんにちは!私、日本でメディカルイラストレーターとして活動しております、株式会社LAIMANのライアン杏莉です。

 

ここでは、メディカルイラストレーションという職業について私見も交えながらお話ししていこうと思います。

 

これまでには「メディカルイラストレーションとは」や「メディカルイラストレーションの様々な専門分野」などこの職業について様々なテーマについてお話しいたしました。

 

メディカルイラストレーターとして活動していると、「こんなニッチな業界があるんだ!」と驚きとともに興味を持ってくださる方が多くいらっしゃいます。同時に、「写真で十分じゃない?」や「文章を読めば良いのでは?」と、メディカルイラストレーションという職種の重要性がまだピンときていない方もいらっしゃいます。

 

そこで、今回はイラストがなぜ必要不可欠な存在なのか、研究論文を紹介しながら具体的に説明していきたいと思います。「メディカルイラストレーションは重要だと思うけど、理由はぼんやりしている」という方にとっても参考になれば幸いです。

 

さて、まずはなぜ情報を伝達する上でイラストが有効なのでしょう?文字だけではなく、絵や図を添えることによってどのように理解を助けるかお話ししていきたいと思います。

 

米国のRichard E. Mayer博士は、マルチメディアによる学習効果の研究の第一人者といっても過言ではありません。Mayerの1989の論文では、車の知識がほとんどない大学生34人をランダムに「活字のみ」(17人)または「図解」(17人)の二つのグループに分け、「ブレーキのメカニズム」についての資料を学ばせたところ、メカニズムの記述問題のテストで21%の差が開きました。

 

<実際に使用された、図説vs文字のみの説明>


また、絵や図は子どもの読解力に対しても効果的であると証明されています。2019年のアフリカ・ガボンのMounguengui博士は、7歳から9歳の子ども52人に対して「文字のみ」または「文字と挿絵」の童話を読ませたところ、童話の教訓への理解が16%高まったとされています。

 

やはり、「文字ばかりの説明文はわかりづらい」と体感される方は多くおられるかと思いますが、学術的に理解力を分析した場合も、イラストの効果は証明されているのです。

 

また、イラストの効果に関わる研究は、認知科学や心理学、教育学など幅広い分野で行われています。ブログ記事一つで到底網羅できる分野ではございませんので、こちらで紹介する論文はあくまでも氷山の一角であるとご理解ください。弊社コミュニケーションディレクターの有賀雅奈も、桜美林大学に在籍する研究者として、メディカルイラストの重要性を論理立てるためにとても大切な研究をしています。

 

さて、今回詳細させていただいた「メディカルイラストの必要性:論文紹介①」参考になりましたでしょうか? 次回のブログ記事では、今回お話しした「ビジュアルの重要性」を更に治療や医学教育という場面に絞って論文を紹介していきたいと思います。ぜひお楽しみに!



参考文献:

Mayer, R. E. (1989). Systematic thinking fostered by illustrations in scientific text. Journal of Educational Psychology, 81(2), 240-246. https://doi.org/10.1037/0022-0663.81.2.240 

Mounguengui, F., & Ilouga, S. N. (2019). Illustration and text comprehension: Tales study for primary students. Journal of Educational and Developmental Psychology, 9(1), 90. https://doi.org/10.5539/jedp.v9n1p90

2022/04/12

20220412-2工程.jpg

 

こんにちは!私、日本でメディカルイラストレーターとして活動しております、株式会社LAIMANのライアン杏莉です。

ここでは、メディカルイラストレーションという職業について私見も交えながらお話ししていこうと思います。

前回はメディカルイラストレーションの様々な専門分野についてお話しいたしました。

今回は、お客様が制作を発注された際に、制作の現場では何が起きているのか、少し裏側をお見せしたいと思います。

弊社HPにもあるこちらのプロセス表にもあるように、お客様の視点からですとこのような段階が踏まれています。では、制作チームはステップ毎で、どういった作業をしているのでしょうか?

 

1. 見積依頼・お問い合わせ

お問い合わせは弊社お問い合わせフォームだけでなく、ご紹介やお電話など多方面からいただくので、管理漏れがないように社内システムで一箇所に記録します。直接お会いしたり、オンライン会議を通してお客様のご要望をヒアリングすることもあります。こういった際にお見せする弊社の過去作品例も用意したり、予めお客様の医療領域について予習したり、といった作業もこちらの工程に含まれます。

 

2. 見積送付・確認

お問い合わせやヒアリングの内容を元に、弊社のスキル、スケジュールでご対応か可能か、そして、誰が制作を担当するかを打ち合わせをします。複数名の制作担当が共同制作する場合もあります。それに加え、イラストの点数、ご希望のタッチ、内容の明確さや難易度、論文の投稿先や使用範囲を考慮してライセンスを決定など、さまざまな要素を考慮して、お見積を提出します。こちらの時点では、あくまで見積もりですで、ご予算オーバーの場合はご相談いただければ、作業工程の工夫や、点数を減らしてわかりやすく見せる提案もいたします。

 

3. 発注

お見積をご確認いただいた後、お客様から正式な「発注」のご依頼をいただきます。
その後、制作内容ごとの契約書を締結して制作を開始します。

 

4.リサーチ・ラフ制作・確認

さて、ここが制作の味噌です。お客様からの視点だと、下絵を制作するよりも、きれいに仕上げる作業の方が大変に見えるかもしれないのですが、実は逆なのです!ラフ案*制作は、限られた作業時間で現実的な範囲かつ、効果的なイラストの構図を練る、高度なスキルを要する作業です。また、こちらのラフスケッチの段階では、お客様のご要望が不明確な場合は、こちらでイメージの土台を決定する必要がありますので、イラストの構図を数パターンご用意する場合もあります。

 

また、この工程はメディカルイラストレーションでは特に重要です。なぜかというと、医学的、解剖学的な知見からイラストを正確に描写できるように、リサーチをするからです。医学的に不正確、または曖昧な描写をしてしまう事はメディカルイラストレーションの業界の信用に関わります。また、弊社は論文や医学書が大好きなオタク集団です。最先端の研究や開発に携わっておられるお客様とスムーズにコミュニケーションが取れるように、専門用語や手術手技の手順を、調べます。ある程度リサーチした上で詳細のヒアリングに臨みます 。お客様からご送付いただいた資料はもちろん、書籍や論文を参考に、理系のバックグラウンドも活用しつつ深く本質的に理解をする事が大切です。信用できる情報源から制作者の理解を深めていきます。このリサーチの工程が、我々の強みであると誇っております。

 

ラフ案をお客様にご確認いただいたあと、変更のご要望がある際は修正し、イラストの構図はこの時点で決定します。

 

5.本制作

決定した構図を元に線を整え、タッチによっては陰影やテクスチャーを整えて立体感をつけ、見栄えの良い作品にします。お客様の視点ですと、この段階でイラストが最終的なイメージ近い状態でアウトプットされるかと思います。

 

6. 仕上げ・確認

制作した作品をお客様のご要望や投稿先の規定に従って適切なファイル形式、サイズにてご用意し、最終的なOKをお客様からいただきます。

 

7. 納品

データをお客様に送付し、案件は一段落です。
イラストを使用した論文が公開された場合にはPDFなどを送っていただいたり、
書籍であればご献本をお願いしており、イラストの使用状況を確認して今後の制作に役立てています。

 

もちろん、お客様のご要望や納期、ご予算、プロジェクトの内容によって制作の内容は大きく変わります。

 

また、3DCGやVR、デザインコンサルタントなどの業務も工程が多様ですので、今回は典型の一例としてご参考いただければ幸いです。

 

さて、今回詳細させていただいた「メディカルイラストの制作工程」参考になりましたでしょうか?簡単そうに見える手順も実際の制作現場では意外と手が掛かる事があったり、稀ですが逆も然りです。発注を検討されているお客様に、「私が発注したらLAIMANはどう動いているのだろう?」と気になった方にとって参考になれば幸いです。

2022/04/05

こんにちは!私、日本でメディカルイラストレーターとして活動しております、株式会社LAIMANのライアン杏莉です。

 

ここでは、メディカルイラストレーションという職業について私見も交えながらお話ししていこうと思います。

 

前回は「メディカルイラストレーターになるためには」についてお話しいたしました。

 

「メディカル」「イラスト」はどちらも莫大な職域・分野であり、細分化されています。「メディカルイラストレーション」の中でも、専門分野は人それぞれです。では、具体的にどういった専門分野があるのでしょう?

 

20220329MIgenres-01.jpg

「メディカルイラストレーション 」は、「どういった目的で使うものか(領域・目的)」「何を使って制作物を作るか(制作媒体)」「何を使って制作物を見せるか(伝達媒体)」のそれぞれの組み合わせにより細分化されます。全ての組み合わせが存在する訳ではありませんので、いくつか具体例をお話ししていきます。

 

王道:教育目的の出版物

教科書、書籍、雑誌、パンフレット、ポスター等に代表される紙媒体は近代医療の伝達媒体としては一番前からあり、現在も確固たるニーズが存続しています。

紙媒体の例としては:

研究者の発表する論文に使う図、イラストレーション

病院で掲示、配布されるポスターやパンフレット

学校の教科書

 

などがあります。

イラストの内容としても、

解剖学、細胞学、病理学、薬学、獣医学など多岐に渡ります。



未来の王道:WebやVR

紙媒体には手軽さという確固たる強みがあります。しかし、電子機器の画面を通すと見ている物が動いたり(アニメーション)自分で拡大・縮小・回転できたり(3DCG)伝達の質をグッとあげられる可能性が広がります。そのため、アプリやウェブサイトでの画面を通してみるメディカルイラストレーションの市場は今後どんどん広がって、主流となっていくでしょう。

 

VRにおいては、医療VRが発達しており、特に医学生や医師の教育に使われることが増えています。3次元的に複雑な体内組織の位置関係を理解したり、手術の手順をよりリアルに近い状態で練習するためには、VRが優れています。

 

他にも:コンサル&橋渡し、裁判、義足などの補装具などいろいろ

上記の紙媒体やweb媒体に共通する部分はあるものの、メディカルイラストレーターの活躍の場は他にもたくさんあります。

医療ミスや事故によるケガを巡る裁判に裁判員がいる場合は、グロテスクな写真や解釈しづらいレントゲンなどは使えません。そのため、海外では法律事務所がイラストレーターを雇い、損害の概要をうまく伝えるイラストやアニメーションを作ることがあります。このMedical Legal Illustrationという分野は、医療、アートのスキルに加えて法律の知識も必要なため、更にニッチな業界です。

 

また、事故や病気などで義足、義手、義眼をされている方の補装具を設計する際も、患者様本人に合った見た目にするために、メディカルイラストレーターが携わることもあります。

 

最後にもう一点、お話ししておきたい大切なことがあります。

それは、メディカルイラストレーションは他業種との連携が必須だ、ということです。

例えば、イラスト一点を制作する場合でも、監修で医師の先生からアドバイスをいただいたり、医療教育のデジタル教材を作る場合はシステムエンジニアの方のバックエンドの設計をお願いしたりなど、他業種の技術者や有識者との連携はとても大切になります。他にも、自分で資料を作ろうとしている医師の先生や教職のお客様に「どのように見せたら伝わりやすいか」といったデザインのコンサルのお仕事もあります。また3DCGを作りたい医師の先生と、3Dモデラーの制作の間に立って指示出しをするような、「橋渡し」役としても活躍の場があります。

制作業というと机に向かってコツコツと作業するイメージがあるかもしれませんが、現実としてはプラスアルファでコミュニケーション・連携のスキルも、メディカルイラストレーターとして有用なスキルになります。2022年3月に開催された日本メディカルイラストレーション学会(JSMi)のテーマも「メディカルイラストレーションにおける多業種連携」だったように、このトピックだけでもブログ記事がいくつもかけてしまいます汗



さて、参考になりましたでしょうか?

 

またの機会に、メディカルイラストレーションの制作物の大まかな手順をご紹介していこうと思います。こういった業種に興味のある方にとって、少しでも参考になれば幸いです。



2022/03/17

Screen Shot 2022-03-27 at 11.26.17 PM.png

こんにちは!私、日本でメディカルイラストレーターとして活動しております、株式会社LAIMANのライアン杏莉です。ここでは、メディカルイラストレーションという職業について私見も交えながらお話ししていこうと思います。

 

前回は「メディカルイラストレーションとは」についてお話しいたしました。この職業について少しでも興味、関心をよせていただけましたでしょうか?そういった方々に向けて、今回は、「メディカルイラストレーターになるには」どのような技術が必要か、どういったステップを踏んでメディカルイラストレーターとして活動するか、お話したいと思います。

 

共通して必要なスキル
メディカルの知識
基本的には、お客様から受注する際に送られてくる資料を理解できる程度の基礎知識が必要です。研究職や臨床で使う知識を100%、最新の情報まで理解するレベルまでは現実的ではありませんが、生物の基礎知識に加えて、資料の分からない部分をどのようにして信用できる情報源から調べられるかという「リサーチ力」も必要になってきます。

 

アートのスキル
もう一つは、アートのスキルです。包括的な意味で「アート」と言いましたのは、絵が上手く描ければいいというわけではなく、それに付随する様々なスキルが必要だからです。お客様の要望やイラストの目的を把握し、効果的に伝わるデザインを考えたり、イラストレーターやフォトショップ、3DCG用などのソフトウェアを使うスキル、著作権の知識など、広範囲におけるアートのスキルが必須です。

 

上記の二本柱を習得する方法はいくつかございます。

 

①医学メインからアートを足す

一つ目は、医学、歯学、薬学、獣医学などの学位の修了に加え、画力やデザインのスキルを学ぶという方法があります。メディカルの知識を学校で得て、アートのスキルは美術の予備校や教室、独学などで習得することで、メディカルイラストレーターの土台を固めます。

 

②美術系の出身で、メディカルの知識を足す

二つ目は、美術大学や制作会社でアートの知識を得てから、医学、生物や化学の知識を得る方法です。アートのスキルは、ポートフォリオで証明できますが、メディカルの知識は、インターネットで独学できるものの、学位や職歴以外に証明できるものがなかなかないのが現状です。そのため、メディカル分野の学校に再度進学したり、資格をとるか、医療系のエントリーレベルの仕事をしながら、現場でメディカルの知識を得る必要があります。医学の知識なしに、(専門家でなかったとしても、正しい情報の調べ方を知らずに)「メディカル」という肩書を謳って、事実と違う描写をしてしまうのはこの業界の信用に関わります。しっかりとメディカルの知識+アートの技術を訓練してから、「メディカルイラストレーター」として活動するべきだというのが、私見です。

 

③メディカルイラストレーション専門の学校に行く

最後に紹介したいのが、メディカルイラストレーション専門の学校に行くことです。日本にも大学プログラムが一つございます。もしも留学が可能であれば北米や欧州で認可された大学院に進学する方法もございます。下記、学校の一覧です:

  • 川崎医療福祉大学(岡山県倉敷市)
  • Augusta University: アメリカ・ジョージア州
  • Iowa State University:アメリカ・アイオワ州
  • Johns Hopkins University School of Medicine:アメリカ・メリーランド州
  • University of Illinois at Chicago:アメリカ・イリノイ州
  • University of Toronto:カナダ・オンタリオ州
  • Zuyd University / Maastricht University: オランダ
  • Ecole Estienne:フランス・パリ
  • University of Dundee :スコットランド
  • Liverpool John Moores University :イギリス・リバプール


さて、いかがでしたか?

またの機会に、メディカルイラストレーションの様々な分野や、それぞれの大学のプログラムをご紹介していこうと思います。こういった業種に興味のある方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

2022/03/13

こんにちは!私、日本でメディカルイラストレーターとして活動しております、株式会社LAIMANのライアン杏莉です。

 

ここでは、メディカルイラストレーションという職業について私見も交えながらお話ししていこうと思います。

 

今回は、そもそも「メディカルイラストレーション」とは何かお話したいと思います。

 

メディカルイラストレーションとは、医学に関する情報を視覚的に伝えることを目的とした分野です。

 

メディカルイラストレーションの起源は、メソポタミア文明やエジプト文明の壁画に描かれた人体や臓器の図の表現から始まり、世界各地で何百年も存在してきました。「モナ・リザ」の作者であるレオナルド・ダ・ヴィンチも実はメディカルイラストレーターなのです!

 

the-vitruvian-man.jpg View_of_a_Skull_II.jpeg

 

 Vitruvian Man」(*1) や頭蓋骨のイラスト(*2)

日本においても、解剖学者の山脇東洋や杉田玄白の「解体新書」などが、江戸時代からメディカルイラストレーションが制作されてきました。

 

img_gallery36.jpg

山脇東洋「蔵志」(*3)

 

こんなにも歴史が深い職業なのですが、21世期の現代においてメディカルイラストはどの様な場面で活躍しているのでしょうか?

古今共に市場を大きく占める媒体は、出版や論文におけるイラストです。

メディカルイラストレーターは、教育現場における教材や論文を執筆している研究所、病院で使う患者説明資料など、目的は様々ですが、紙やweb媒体に使われるイラストの制作は常に需要が存在します。

BVIS510_RyanA_Assign1_2018.jpg

 

 また、デジタル化が進む中、「メディカルイラストレーター」という肩書きですと2次元の媒体のみを想像されるかもしれませんが、3DCGの媒体も制作します。例えば、人体解剖用の3Dアプリや、他の媒体にアウトプット(スクリーンショット・レンダリング)される素材の元素材として3DCGのモデルを制作することが多くあります。

 

 他にも、アニメーション、VRなど、メディカルイラストレーターの活躍できる場面の可能性は更に広がっていくことが期待されています。

 

 媒体を問わずメディカルイラストレーターの仕事として共通する内容は、

①お客様の「伝えたいこと」を把握し、それをどの様にビジュアル化すれば効果的に伝わるか考えデザインする

②科学的に正確な成果物を制作するために、リサーチをする

ことです。メディカルイラストレーターとして医学の知識とアートの技術がベースとなりますが、この職業の真髄は上記2点にあると思います。

 

さて、メディカルイラストレーションとは、参考になりましたでしょうか?

 

追々、メディカルイラストレーターになる方法をご紹介していこうと思います。こういった業種を考えている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

 

 

 

*1 (The Vitruvian Man - by Leonardo da Vinci. (n.d.). Retrieved February 20, 2022, from https://www.leonardodavinci.net/the-vitruvian-man.jsp)

 

*2 (Medimagery.com. (n.d.). Retrieved February 20, 2022, from https://medimagery.com/the-most-famous-medical-illustrator-of-all-time-leonardo-da-vinci/)

 

*3 日本歯科大学新潟生命歯学部 医の博物館. 山脇東洋:蔵志|展示品ギャラリー|日本歯科大学新潟生命歯学部 医の博物館. (n.d.). Retrieved March 13, 2022, from https://www.ngt.ndu.ac.jp/museum/gallery/galleryitem36.html 

 

2021/11/24

D3916BB9-E6FD-4CA2-8938-65758908F173.png

 こんにちは!私、日本でメディカルイラストレーターとして活動しております、ライアン杏莉です。


こちらの、レーマンOPINIONでは、メディカルイラストレーションとは何か、今後の業界の動きなど、私見も交えながらお話ししていこうと思います。


さて、今回は、2020年に筆者の私が卒業した、University of Illinois at Chicagoの Biomedical Visualizationについてお話ししていこうと思います。特に、こういったメディカルイラストレーションを専門とする学校に入学するために必要だった準備を紹介していきたいと思います。


まずは、出願の背景から。


メディカルイラストレーションというキャリアに進みたい場合は、アメリカやカナダにあるメディカルイラストレーションを専門とするの大学院に進学するという方法があります。現在、 Commission on Accreditation of Allied Health Education Programs (CAAHEP) という教育機関から認可されている学校のプログラムは4校あります。


Augusta University: アメリカ・ジョージア州


Johns Hopkins University School of Medicine:アメリカ・メリーランド州


University of Illinois at Chicago:アメリカ・イリノイ州


University of Toronto:カナダ・オンタリオ州


 


こちら4校は、倍率が高く、合格するためには、出願の数年前から準備が必要になります。


私の場合も、大学在学中にメディカルイラストレーターになりたいと決意してから、3年半後に大学院に入学しました。ここまで時間がかかるのは、出願する際に準備するものがたくさんあるからです。


 


実際に準備するものは、


願書・志望動機


大学の成績表(必修科目の履行)


推薦書


GREテスト


ポートフォリオ


があり、上記のいわゆる「一次書類審査」が受かったら、現地に面接にいきます。


 


では、ひとつづつ紹介していきましょう!


 


願書・志望動機


こちらは、標準的なものです。


 


大学の成績表(必修科目の履行)


学業での成績が良いか、ということも審査基準となるのですが、そもそも出願する前に、サイエンスとアート、両方の域で履行されているかということがポイントになります。特に、サイエンス系の中でも、解剖学の授業を1年間と、デジタルアートの授業は私が通っている大学で授業がなかったため、他の大学に受けにいきました。評定平均もみられますが、基準値を満たしていれば完璧でなくても大丈夫でした。


 


推薦書(3通)


インターン先や職場、そして学校でお世話になった先生や上司の方に頼んで、推薦状を送って頂きました。


 


GRE 


こちらは、英語と数学の2科目を含む、アメリカの大学院に出願する際にはスタンダードな学力テストです。こちらも評定平均と同じように、基準値(計300点)を満たしていればOKでした。また、場合によってはTOEFLなどの、英語力を証明するテストも受けなければいけません。 


 

                                                                                        


ポートフォリオ


さて、ここが出願する際の真髄になります。ポートフォリオの提出はとても苦戦しました。提出作品の内訳としては:


ヌードモデルのデッサン(ショート&ロングポーズ)


手、顔


立体の鉛筆デッサン


静物画


その他自選10作(デジタルアートなど)


合計20作品 (ご参考までに下記作品例です。)




実は筆者は、一回目の受験は失敗しました。初めて出願する際に落ちてしまった原因は、ヌードモデルのデッサンの完成度が低かったことでした。私の場合は、静物画は得意分野だったのですが、ヌードモデルのデッサンがあまり経験がなかったため、ポートフォリオ全体のバランスが悪くなってしまっていました。翌年に再出願するために、ひたすらヌードデッサンを練習しました。 


他にも、私の後輩がこちらのyoutubeチャンネルにて、ポートフォリオの内容を紹介していますので、チェックしてみて下さい!


https://www.youtube.com/watch?v=UedFQ5J8MrI&t=62s


認可されてる他の学校も、ポートフォリオの内容は大体一緒です。


 


面接


面接は、丸一日かかりました。学部の教授、全員と15分づつくらいお話しし、最後には、作品を教室に並べて、教授に実際にプレゼンしました。スケッチブックをかなりみられました。やはり日頃から絵を描く習慣がある生徒が欲しいそうです。


 


また、北米の他の大学や、ヨーロッパにも、それぞれの学位、年数、専門領域でメディカルイラストレーションのプログラムがありますが、こちらはまたの機会にお話しできればと思います。


さて、どうだったでしょうか?


こういった業種の中での進学を考えている方の少しでも参考になれば幸いです。


次回は、私がBVISで受けた授業についてもお話ししていきたいと思います。

2022/06

      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

Monthly Archives